Tales of Phantasia
旅の終わりは、春。 かけがえのない仲間との、別れの言葉と、再開の約束を交わし…。 新しい「時代」へ向けて、一歩、踏み出す。 大切な、2人の仲間と共に。 それはきっと、新しい旅の始まり。 「でも、村を再建するって言ったって…、具体的に、何をしたらいいんだろ?」 どこかのんびりとした口調で疑問を口にしつつ、腕組みしてみせるのはクレス・アルベイン。 この時代の人々に知られてはいないが、「過去」「現代」「未来」……3つの時代において、世界を救った「時空の勇者様」の一人であったりする。もっとも、こうしていると、純朴そうな青年剣士という風にしか見えない。 「そうだな〜。まずは、人手と資材、それに、金も結構要ると思うぜ?」 「でも、とりあえずは今日寝る場所を確保しませんと…。」 答えたのは、青銀の髪の青年と、黄金色をした長い髪の乙女。 クレスの大切な仲間――チェスター・バークライトと、ミント・アドネードである。 付け加えて言うなら、親友と、気になる彼女、といったところ。 「それなら、クレスの家を修理しようぜ。」 道場は広いし、門下生の為の部屋も幾つかあるので、これから人を集めるのに有用だろう、という事でクレスは頷いた。 既に昼下がり。日は傾きかけている。 とりあえず、応急の処置ということで、壊されたドアや窓、壁を板で塞ぐ事にした。 幸い、材料は倉庫に有った。 「父さん、日用大工、時々やってたからなぁ…」 握り締めた金槌を見つめ、クレスは呟く。 心なしか、沈んだ声で。 ――――――これから先、うまくやって行けるんだろうか… 旅をしていた頃とは別の不安。 次の板を取り出し、壁に穿たれた穴に打ち付ける。 ちなみに、ミントは家の中の掃除、チェスターは食料の調達に南の森へ行っている。 ――――――村の復興…。そして、アーチェを探して…。それから、僕はどうするんだろう…? ・・・ガンガンガンガンガン!! 「!!っ〜〜〜痛っ〜〜〜〜!!!」 考えに気を取られ、思いっきり金槌で親指を叩いてしまった。 「ああ〜っ、内出血しちゃったな…。」 痛くて堪らないのだが、クレスは思わず、くすりと微笑ってしまった。 ――――――そんな先の事なんて、考えてる場合じゃないか。今は、村の事だけ考えよう! 今まで通り、「今出きる事」をやっていけばいい。 それ以上のことを考える余裕なんて、ないんだから。 「クレスさんったら、ケガしたのなら、早く言って下さい!」 クレスの手を治療しながら、厳しい声音で注意する。 「ごめんってば。でも、大丈夫だよ、血は抜いておいたんだし…」 結局、クレスはあの後も修復を続け、晩御飯前になってやっとミントに回復を頼んだのだった。 「ミントも、忙しいだろうと思って。」 ――――――言い訳なんて、知らないんだから! 無言で法術を続ける。 ――――――化膿しちゃったらどうするつもりだったのかしら! ちらり、と、クレスの顔を見やる。 ちょっと困ったような、でも、いつも通りの、のんびりとした顔。 ――――――私がどんなにクレスさんの事、大切に思っているかなんて…解ってくれてないんだから… 「…はい、終わりました。今度から、ちゃんとすぐに言って下さいね。」 心の内とはうらはらに、落ち着いた声で釘を刺し、背を向けて台所に向う。 「ミント…?怒ってる?」 一人残されたクレスの呟きが、間抜けに響いた。 質素ではあるが、暖かい食卓。 なのに、どうにもクレスとミントの様子が変。 「ユグドラシルって、ホントに復活してるのな。あの枯れ木が立派な樹になってるから、驚いたぜ。」 雰囲気を和らげようと、話題を振ってみるのだが。 「そうか〜。流石はミントのバリアーだね。」 「ユニコーンのおかげです…。私は、枯れたユグドラシルを実際見たことは有りませんけど…。」 ちゃんと受け答えしてはいる。が。ミントはさっきから、クレスの方を全く見ていない。 「……イノシシ鍋、美味しいねェ!ミント、オカワリ!」 「自分でついで下さい。」 こんな調子である。 ――――――やれやれ、俺の留守中に何があったんだか… しかも、なんだか、ミントの機嫌は、時間の経過と共に悪くなっているようだ。 (おい、クレス、一体どうしたんだよ。お前等。) 小声で訊ねてみる。 (えっ。…っとね………) クレスは、素直に理由を耳打ちする。 (………なるほど。それはお前が悪いな。) (で、でも!謝ったのに? 僕、なんでミントが怒ってるのかわかんないよ!) ――――――あ〜あ、涙目しちゃって。そんなにミントを好きなくせに、なんでわかんないのかねぇ (ま、乙女心は複雑ってことだよ。) (えーーー???ますますワカンナイよ〜!) 真剣な顔をして悩み始めたクレスを、とりあえず、ほっておくことにする。 ――――――だいたいコイツは、こういう事に鈍すぎるんだ。ちょっとは自分で考えた方が良いよな その夜は、クレスとチェスターはクレスの部屋で、ミントはマリアの部屋で眠る事になった。 悩みよりも、昼間の疲れが勝さり、クレスはすぐにぐっすりと寝入ってしまったのであった。 明けて、朝。 今日も爽やかに勤労の一日が始まる。…のだが。 どんよりとした空気を纏った男が一人。 言うまでもなく、クレスである。 未だにミントの怒りの訳が解らないこと。そして、それなのに熟睡してしまう自分への憤り。 「どんな顔して会えばいいんだーーー?」 だんだんと思考が泥沼になりつつすらある。 だが。 「あ、クレスさん。おはようございます。」 にっこりとミントが微笑む。 「……クレスさん?」 目を見開いたまま動かないクレスに、小首を傾げてみせる。 「あ…、お、おはよう。」 ギクシャクと挨拶を返すクレス。頭の中は大混乱だ。 微笑みで答え、ミントは朝食の仕度に、台所へ向った。 「あれ?もう仲直りしたのか?」 階段の上から声がかかる。 「ちぇすた〜。」 「な、なに訳わからん顔してんだよ。」 てっきり喜んでいるかと思いきや、見上げてくるクレスの表情は複雑だ。 「なるほどねぇ。」 事の顛末を聞いて、チェスターは頷いた。 「僕、もう、ミントがわからないや…」 階段に腰掛け、俯くクレス。 「おいおい; んなこと言うなよ。っと、クラースさんならなんて言ったかな、こういうの。『乙女心と…』」 と、窓を見やる。どこからか、桃色の花びらが風に運ばれて舞っている。 「…『…春の空』だっけ?」 聞かれても、クレスがそんな諺を知っている筈もなく。 「…許してもらえたんだから、いいじゃんか。」 「うん…。そうだけど…。」 「とりあえず、これで安心して出かけられるな。」 「へ?」 思わず顔を上げる。 「いろいろ要るもん有るだろ?報告も兼ねて、モリスンさんのところまで行こうかと思ってな。」 「あ…」 すっかり失念していた。モリスンさんには、すっかりお世話になっていたというのに。 「お前等二人は村で作業続けててくれよ。あそこくらいまでなら、俺一人で十分だからさ。」 「ええ?!」 「いや〜、喧嘩してるままだったら、どうしようかと思ったぜ。」 「で、でも!」 「あ、ミントには昨日のうちに了解取ってるから。」 ――――――いつの間にっ 二人きり。である。家に、とかいうレベルではなく、この村に。 チェスターを見送って、昨日の続き、道場の修復をしつつ…横目で、散乱した室内を片付けているミントを見やる。 ミントが折角怒りを解いてくれたんだから、バンバンザイだ。だけど。 ――――――僕は、彼女の気持ちを何一つわかっちゃいない… ・・・ガンガンガンガンガコン!! 「っつ〜〜〜!!!!!」 戦闘においてはニの徹は踏まないクレスだが、日用大工は別の話のようだ。 「!クレスさんっ! 大丈夫ですか?」 心配したミントが駆け寄ってくる。 「あ、ああ、大丈…夫……じゃ、ない…かな。」 見ると、昨日よりも酷いことに、爪が割れてしまっていた。 差し出した手を、ミントの柔らかな手のひらが包む。 「…全ての母なる優しき大地よ……キュア!」 暖かい光が、傷を癒していく。 クレスは、真剣な…優しいミントの表情を見つめ…思いきって、聞いてみることにした。 「…ミント。」 「はい?」 精神の集中は術に置いたままで、顔を上げるミント。 「あのさ、昨日のことなんだけど…」 「ごめんなさい!」 「…へ?」 いきなり謝られてしまった。 「私ったら、あんなことでイライラしてしまって…。本当に、ごめんなさい…。」 法術が完成し、光が消える。 「クレスさん、ちゃんと謝って下さったのに…。」 うなだれるミント。 「ちょ、ちょっと待ってよ!ミントは悪くない!悪くないよ!ミントが謝る事なんかないって!」 「クレスさん…。」 「僕が悪いんだ。ミントが心配するって事くらい、解ってる筈なのに…。」 ぽとっ。 雫が、零れ落ちる。 「ミ、ミント?!」 泣き出してしまったミントを前に、クレスはひたすらおろおろする。 「…かった。」 「は?」 「…良かった…。私、クレスさんに嫌われたらどうしようかと…。」 ――――――それに、クレスさんは、ちゃんと私の気持ちを解っていてくれた… たとえそれが、『特別』な心配だと気づいていないとしても。今は、それでもいい。 「僕がミントを嫌う筈ないじゃないか!ねぇ、もう、泣かないでおくれよ…」 優しく、優しく、ミントの頬を伝う涙をそっと指で払う。 「…ふふ。嬉し涙…だから…。」 涙を流したまま。でも、とても幸せそうに、ミントは微笑んだ。 |
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アトガキ★ 一応、今回は導入その1ってことで、ED直後の三人の様子を書いてみました。 他にいっぱいスバラシイ小説を書かれてる人がいるので、ぷれっしゃーが…;; これからの日々を思い起こさせることができれば…いいなぁ。 |